このたび『中国の環境保護とその歴史』(袁清林著、久保卓哉訳、研文出版)を上梓しました。この書を読むと、古代の自然環境の美しさと、それが森林伐採や干拓造田によって砂漠化と湖沼の消滅を生じ、次第に環境が破壊された歴史がよくわかります。また一方では、環境破壊の危険性に気づいて、古代より既に環境保護機構である「虞衡」を確立させていたことがよくわかります。驚くのは本書が単に歴史を明らかにしているだけでなく、返す刀で今の中国の砂漠化や森林破壊の悪の実態を鮮やかに切り刻んでいることで、「文明と野蛮を分ける分岐点は地球を愛するかどうか、環境を大事にするかどうかにある」と主張する著者の広い視野が展開されています。

(『東方學會報』No86〈会員通信〉平成16年7月27日発行 掲載)